「典故300則」その2192013年04月21日 08:51


 今日の主役は“張禄”こと、“范雎:はんしょ”。上司の嫉妬から無実の罪に陥れ

られ魏を逃れ、苦労の末秦の昭襄王の絶大な信任を得て宰相となった男である。

 義理に篤く、逃亡時代匿ってくれた人など、これまで自分を助けてくれた人に自

身の財産を投げ打って礼をして回った。この時の彼は一杯の飯の恩義にも、ある

いは睨みつけられただけの恨みにも必ず報いたという。

 典故300則その219:绨袍 ti pao

 戦国時代、范雎は魏の大夫须贾に仕えていた。 ある時范雎は须贾に随行して

斉へ行った。斉の襄公は范雎の弁才を認め、彼にいくらかの財物を贈った。须贾

は邪推して 范雎が密かに斉へ身を投じると思い、帰国後この事を相国の魏齐に

告げた。魏齐は激怒し、须贾に鞭打ちを命じた。 范雎は危うく命を落とすところで

あったが、張禄と改名し、秦に身を寄せ、やがて秦の宰相になった。

 その後、秦が魏を攻め、须贾が使者として出向き、范雎は庶民に扮装して须贾

の宿舎にやって来た。须贾は彼がとっくに死んだと思っていたので、とても驚いた。

须贾は范雎がとても貧しい姿であったので、すぐに食事を与え一着の衣を贈った。

ほどなくして、须贾は范雎が秦の宰相張禄だと知った時、とても怖くなった。しかし

范雎は须贾から以前衣を贈られたことから、彼に害を与えなかった。

 後に“绨袍”、“赠绨袍”は昔の恩を忘れないことの喩えとなった。