「典故300則」その2132013年04月15日 07:41


 今日の主役は“泰山”。日本人にとっての“富士山”、朝鮮人にとっての“白頭山”

に匹敵する、中国人にとって最も神聖なる山である。

 “泰山鳴動して鼠一匹”という諺があるが、これは本来“大山”と書き、中国の泰

山を指している訳ではない。 中国起源の諺と勘違いされやすいが、その出典は

古代ローマの詩人ホラティウスの言葉から出たものだそうである。

 典故300則その213:泰山 tai shan

 ある年、唐の皇帝玄宗が封禅のため泰山に行った。 これは泰山で天地を祀る

ことである。 彼は宰相の张说に封禅使を命じ、封禅式典の具体的な準備を任せ

た。 玄宗は封禅の後、慣例に則り一品以下の各級官吏全員を一級昇格させた。

郑镒という男がおり、本来九品の小官だったが张说の娘婿であったので、なんと

一気に四級上がり一躍五品の重役になった。

 郑镒は赤い官服着て、元気溌剌であった。 宴席で玄宗が郑镒にどうして九品

から五品に昇格したのか尋ねると、郑镒は額に大汗をかいて、何も言えなかった。

傍にいた一人の宮廷芸人がからかって言った。“これこそは泰山の力だ!”遠回

しに、郑镒が岳父の张说の力に頼っていることを言ったのである。 玄宗はこれを

聞いて大笑いした。

 以来、“泰山”は岳父の別称となった。