「典故300則」その251 ― 2013年05月25日 20:52
今日の主人公は春秋時代、賢人として誉れ高い“延陵の季子”。呉王寿夢
には五人の息子がいたが、賢人として名高い季札を跡継ぎとしたいと思って
いた。末弟の季札は兄を差し置いて王位に即くことを堅く拒み、野に下った。
その後、父や兄たちに何度も王位に付くよう要請されたが、頑なに拒み続
け、臣としての努めを貫いた。
典故300則その251:心许 xin xu
季札は春秋時代の呉王寿梦の息子である。彼はとても品行方正で、諸侯
の間でも評判が良かった。
ある時、季札が使節として北方の諸国へ行く途中、徐の国を通りかかった。
徐の君主は彼を篤く持てなした。君主は季札が腰にした一降りの宝剣を目に
し、彼は気に入って遠慮がちに求めた。季札は君主の気持ちを汲み取り、心
に決めた。 この剣は使節として必要なものなので私が北方から戻ったら彼
に贈ろう。そこで、彼は君主に別れを告げ、道を急いだ。
李札が北方から戻った時、君主は既に死んでいた。季札はとても悔やんで
その宝剣を君主の墓前の樹の上に掛け、手を合わせた。
皆、理解できなかったが季札は言った。“吾心已许”その意味は“私はあの
時、彼に剣を贈るとは口に出さなかったが、心の中では答えていたのです。
以来、“心许”は口には出さず、心で答えることを喩える。
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