ガンチュー(その4)2005年06月20日 20:55

 入院して二ヶ月が経った。主治医の石川先生も驚くほど
の回復ぶりであった。視力は0.1もなかったが、もう顔を
近づければ、人の顔も大体わかるようになってきた。勿論
みんな美男・美女である。

 回復に伴って、食欲も増してきた。もともとこの病室では
両眼とも見えなかったのは私だけで、他の人達は片方の
眼は見えていた。病院の夕食はとても早い。5時半には
食べ終わってしまい、8時頃には小腹がすいてくる。

 毎晩8時頃になると、今夜の夜食は何にするか、相談が
始まる。蕎麦にするか中華にするか、結構これで盛り上が
る。入院患者のストレス解消には、夜食の検討会が有効
である。話がまとまれば、交代で出前を注文する。

 マンドリンのレッスンも続き、へたくそながら何曲か弾け
るようになった。退院したらさっそくマンドリンを買いに行く
ことになりそうだ。相変わらず見舞いの客も多く、意外と
快適な入院生活であった。・・・ガンチューさえなければ。

 恐怖のガンチューも、主治医の見事な手際のお陰で
一瞬のうちに終わってしまう。”上を向いて”と言われた
瞬間には、もう針が私の”白目”に射さっており、あっと
いう間に薬液が注入され終了する。次第に慣れてきた。

 ある日、いつもと違う若い先生が治療にやって来た。これ
からは、火曜日と木曜日の週2回は、この若い先生が看て
くれるという。どうやら近くの慶応病院の先生らしい。さっそ
く”ガンチュー”の声がかかった・・・。