「典故300則」その1772013年02月26日 09:09


 儒の国中国、“徳を持って国を治めるべし”という孔子の思想を連綿と叫び続

けて来たものの、その実賄賂で成り立つ中国社会、そんな中国にもこんな清廉

な役人がいたという話。

 典故300則その177:器重 qi zhong

 漢の宣帝の時代、疏广という大臣がいた。彼は歴史の教典を熟読し、《春秋》

に精通し、学識も人徳も優れていた。皇帝は彼を重く見て太子の太傅の指導官

とした。 史書の中の記述によれば“广由は重んじられ、何度も恩賞を受けた。”

とある。

 その後、疏广は年老いて官職を辞して故郷へ戻った。皇帝と太子は彼に金品

を贈ったが、彼は全て故郷の人達に分け与えた。ある人が子孫のために少しは

残しておいてはと勧めたが、彼は言った。“もしも子孫が聡明ならば財産は彼らの

成長の妨げになるし、もし子孫が愚鈍であれば財産は彼らの過ちを助長してしま

う。” 人々はこれを聞いて、みな疏广の将来を見越した見識に感服した。

 “器重”は、今では上役が部下を、年長者が後輩を大切にすることを喩える。