「典故300則」その1642013年02月12日 09:01


 今日の主人公は、春秋時代の楚の宮廷楽士“鐘儀”、歴史に記された最古

の琴の演奏家である。

 典故300則その164:南冠 nan guan

 钟仪は楚の郧县の長官で、後に鄭の捕虜にされ晋に送られた。晋は钟仪を

武器庫の中に拘禁した。

 ある時、晋候が武器庫を視察し钟仪を見つけ、訪ねた。“あの南方の帽子を

被っている囚人は誰か?” 部下が答えた。“楚の捕虜です。” そこで晋候は

钟仪に引見し彼を慰めた。 晋候は訪ねた。“あなたは故郷では何をしていた

のか?” 钟仪は答えて“楽士でした。” 晋候は、琴を持ってくるよう人に命じ、

钟仪に演奏するよう求めた。 钟仪の演奏は全て南方の故郷の曲で、彼の故

郷への深い思いを表していた。晋侯は钟仪を放免した。 钟仪は帰国後、楚と

晋の関係修復に努めた。

 “南冠”は南方の帽子である。 後に“南冠”、“楚囚”は囚われの人、また異

郷に囚われ、いまなお故郷を偲ぶ気持ちを表すのに用いられるようになった。