モモ(その2)2006年05月01日 23:37

 スペインの宮廷画家であり、風俗画や宗教画を描いた
有名な画家ゴヤの作品に”わが子を食らうサトウルヌス”
という画がある。サトウルヌスとは、ギリシャ神話に出て
くる土星の守護神であり時間を司る”クロノス神”のこと
である。

 余談ではあるが、あのセイコー社が1960年に手巻き
高級腕時計”キングセイコー・ファースト”のベースモデル
に”クロノス”と命名したも、この由来からである。

 クロノス神の神話は、自分の子供である”時間”を食い
殺すという、人間の奥底に存在する恐ろしい”業”を顕し
た物語で、クロノスはウラノスとガイアという二人の巨神
の間に生まれ、レアと結婚してゼウス・ハデス・ポセイドン
ら多くの子供達をもうける。

 子供達に地位を奪われるという予言を恐れたクロノスは
生まれた子供達を次々と飲み込んでいったが、最終的に
ゼウスに破れ、地獄タルタロスへと幽閉されてしまう。

 ゴヤの描いた”わが子を食らうサトウルヌス”は、己の
宿命に恐れおののきながら、目を見開き自分の子供を
食いちぎろうとする壮絶かつ悲惨な光景を描いている。

 エンデは、この神話をヒントにして”モモ”を書いたので
あろうか。だとすれば人間から時間を奪ってゆく灰色の
男はクロノスであり、その魔の手から人間を救うモモは
全能の神ゼウスということになるのだろうか。

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