兵・食・信2006年05月31日 20:52

< 岡崎城(岡崎公園)に立つ神君家康公 >

 徳川家康の幼少期、彼がまだ竹千代と呼ばれ、今川
義元のもとで人質暮らしをしていた頃の話である。時の
No,1武将であった義元は、自らの師である太原雪斎
を竹千代の教育係につけていた。

 ある日太原雪斎は竹千代を呼んで、彼にこう言った。
”大将に大切なものは兵と食と信である。この三つの内
やむを得ず一つを捨てねばならぬとすれば何とする。”

 ”わかりませぬ。”と言う竹千代に、雪斎は”まず兵を
捨てよ、兵がなくとも生きてはゆける。”と答えた。次に
”残った食と信の内、やむを得ず一つを捨てねばならぬ
時には何とする”と、続けて問うた。

 竹千代は答えた。”それは信です。食が無ければ生き
てはゆけませぬ。”雪斎は言った。”そうではない。確か
に食は大切であるが、人と人が信じられなくなれば必ず
や諍いが生じ、いずれ滅びる。人と人とが信じ合えること
こそが最も大切である。”

 これは全26巻からなる世界最長小説としてギネスにも
載った山岡総八氏の”徳川家康”の中に出てくる一場面
であるが、ご承知の通り孔子の論語から引用したもので
ある。

 2500年の時を経た現在、孔子の唱える”人を大切に
し、信を重んじて国を動かす”真のリーダーは、果たして
どこに居るのだろうか。