便器を大切にね!2005年08月20日 06:26

 高校生は、いたずら盛りの年頃である。学校や寮の中
そして通学途上と、彼等の立ち回る所では何が起こるか
わからない。私が全寮制の某市立高校で生活指導をして
いた頃の話である。

 高校生の規反行為は、さまざまである。飲酒や喫煙の
ように仲間の手前、大人ぶってやってみせる未成年禁止
行為から、試験でのカンニング、いじめや暴力、そして
万引きや不正乗車など、いろいろである。

 ある朝、校舎のトイレが詰まって水が溢れ出していた。
便器の中からは、空き缶が何本も出てきた。学校や友達
に対する不満を訴えるメッセージである。自分の意見を
堂々と主張できない”ネクラ”なタイプの子供達がよく
やるイタズラである。

 翌週、また別のトイレが詰まった。今度はトイレット
ペーパーがロールのまま何本も押し込められていた。次
の週には、野球部の使う軟式ボールが十数個も詰まって
いた。被害に遭うトイレは、みな同じ棟の同じ階ばかり
である。(両側2箇所ある)

 全校集会を開いて、再発防止を訴えた。生徒会も必死
に動いた。教師と生徒会とが協力してパトロールを開始
した。注意を呼びかけるポスターも作られた。そのポス
ターのデザインが、なかなかふるっていた。

 当時、東京電力のマスコット役を”ピカちゃん”から
引き継いだ”でんこちゃん”の目の下に”泣き黒子”を
つけた、”でんこちゃん”ならぬ”べんこちゃん”が、
”便器を大切にね!”と訴えたものだ。緊迫した中にも
学校側のユーモアと余裕が感じられた。

 結局、犯人はわからずじまいとなったが、トイレへの
イタズラは、これ以降パッタリと止まった。彼等は何を
主張したかったのか、そして今、いったいどんな社会人
になっているのだろうか・・・。