手話講座(その1)2005年08月01日 22:38

 NHKの語学講座は、実にバラエティーに富んでいる。
英語は勿論、フランス語・ドイツ語・中国語・スペイン
語・韓国語・イタリア語・ロシア語、そして手話講座も
やっている。どの講座にも看板娘や看板息子を据えて
内容も工夫されており、なかなか楽しい。先日テレビに
流れている手話講座を見て、ちょっと懐かしくなった。

 私が手話に出会ったのは平成8年9月、二度目の単身
赴任の時であった。単身赴任の夜は長い。毎晩つきあい
では、身体にもサイフにも不健康である。そこで、都の
勤労者ボランティアセンターが主催した”勤労者のため
の楽しい手話講座”に参加してみた。

 場所は中野サンプラザで、9月4日から週1回の全5
回の講座であった。受講者は全部で91名と、かなりの
人気であった。教室は女性が大半を占めていたが、私の
ようなオヤジも結構参加していた。

 手話で自己紹介をしたり、手話コーラスに挑戦したり
の手話学習のほか、盲ろう疑似体験や講演会など、なか
なか充実した内容であった。

 聴覚障害のハンデをを持ちながらも、都の職員として
活躍されている草茅裕二さんや、9才で失明・18才で
失聴という重複障害をものともせず、日本の盲ろう者と
して初めて大学に進学し、更には大学院進学を果たした
福島智さんの講演(通訳つき)など、こころに滲みる話
を聞かせていただいた。

 後年、福島さんは「渡辺荘の宇宙人」というタイトル
で、ご自身の体験談を出版され、「日本沈没」で有名な
あの小松左京氏からも熱いメッセージを贈られていた。

 手話をご指導頂いた”リルフィン”の五十嵐紀子さん
には、この講座が縁で、数年後私の事業所の手話講座
にもお出で頂くこととなった。

発明長者への道(その1)2005年08月02日 10:54

 送電線の電気事故の原因は、いろいろである。一番は
何と言っても”雷”で、約8割を占める。雷を始め台風
や雪などの自然災害によるものは、原因がお客さまにも
分かり易いため、事故説明にはそれほど苦慮しない。

 対応に苦慮するのが”鳥獣”によるものである。雷の
次に多く、中でも”烏の営巣”によるものが大半を占め
ており、事故点を発見するのも一苦労である。継電器や
事故検で区間を絞り込み、巡視や聞き込みを行い、確定
するためには鉄塔に昇って事故の痕跡を確認する。暑い
日の昇塔点検は、本当に大変である。

 烏による事故は、営巣時期の3月から6月に集中する。
高い木の少なくなった市街地周辺では、鉄塔の上に
巣を造るからだ。昔のカラスは、木の枝や草蔓によって
巣を造っていたが、今のカラスは鉄骨構造の営巣をする。

 ゴミ捨て場から、洗濯屋さんの針金ハンガーを銜えて
ゆき、巧みに加工(しっかりと曲げてある)し、とても
頑丈な造りとなっている。風で飛ばされぬよう、鉄塔の
部材にしっかりと括り付けてある。

 大きさは大体、直径80cm位で、内側はシュロの皮
などが敷き詰められておりとても柔らかく、雛たちには
すこぶる快適なベッドになっている。烏は光物が好きと
見えて、ときおり巣の中から100円硬貨や指輪などが
発見される。

 烏の対策には、日本中の電力会社が頭を悩ませており
現在でも100を優に超える、対策が商品化されている。
クローアウト、カラスニゲール、トリクルナーなどなど
その苦労がネーミングにも現れているが、今の所決定的
なものは現れていない。

 どれも最初は効果を発揮するが、暫くすると全く役に
たたなくなってしまう。烏の学習効果によるものである。
もしも決定的なものが開発されれば、日本中の(世界中
かも?)電力会社が欲しがること間違いなしである。

発明長者への道(その2)2005年08月03日 19:37

 カラスの営巣材の接触によって電気事故になったこと
を、需要家のみなさまにご了解頂くのは、なかなか大変
なことであった。今でこそPRが行き届いて、営巣材に
金属(針金ハンガー)が使用されていることをお分かり
いただけるようになったが、私が現場で設備保守を担務
していた昭和の時代は、まだまだ浸透していなかった。

 そこで、カラスの巣を丁寧に取り外し、再度きれいに
組み立てて透明のアクリルケースの中に入れ、各事業所
の入り口に置いてみた。もちろん解説付きである。これ
がなかなか好評で、お客さまはもちろん社内他部門から
も喝采を浴びた。

 それにしてもカラスは本当に賢い。堅い実を線路の上
に置いて電車に割らせてみたり、訓練の為に小石を銜え
て高所から落下させ、子どもにキャッチさせたりする。
また、営巣期は特に凶暴で人間を襲ったりもする。私も
高校生時代、後ろから飛んできたカラスに学帽を持って
行かれたことがある。多分彼等のベットとして使用され
たことであろう。

 カラスは、大別して2種類である。都会に住みネズミ
などの小動物も餌とする”ハシブトガラス”と、田園地
帯をねぐらとしミミズや昆虫などを餌とする”ハシボソ
ガラス”である。ハシブトガラスの嘴は太くて短い。何でも
食べる雑食ガラスである。新橋で朝一番に残飯を漁って
いるのが彼等だ。高級料亭からの残飯の権利は彼等に
ある。彼等の群れが去って行くまでホームレスの人達も
手が出せない。

 前回書いたように、カラスの事故を無くすために電力
会社は色々な工夫を重ねている。最初は追い払うことを
目的とした対策ばかりであったが、彼等の学習効果の高
さに敬意を払い、共存共栄を狙った誘導策も誕生した。

 なにしろ、追い払っても隣の鉄塔に移るだけで根本的
な解決にはならないからだ。充電部から十分離れた処に
営巣を誘導しようという作戦である。これだけカラスが
増殖したからは”害鳥”として、暫くは自由に捕獲を許す
のも一つの方法と考えるが、どっこい鳥類保護団体の
先生方が許可してはくれない。

 そこで、発明教室のみなさんの出番になる。カラスを
鉄塔からおとなしく退散させることができれば、発明長者
への道は開ける。