「典故300則」その652012年10月26日 06:13


 今日の主役は、あの始皇帝を暗殺しようとした男、荆轲。そして彼の暗殺

計画に命を擲って協力した男、樊於期。 始皇帝暗殺計画の裏には、この

ような凄絶な物語が隠れていた。

 典故300則その65:扼腕 e wan

 戦国時代、秦の将軍樊於期が行き場を失い(走投无路) 燕の国に逃れた。

秦は樊於期を捉えるため千金の懸賞金を出したが、燕の太子丹は彼を保護

した。 燕と秦は並び立たず、太子丹は荆轲に秦王の暗殺を命じた。 荆轲は

無断で樊於期に会いに行き話した。 “秦の国は、あなたの父母と家族を殺し、

しかも、あなたの首に懸賞金をかけました。あなたはどうするつもりですか?”

樊於期は涙を流しながら言った。“この期に及んで、恨み骨髄に達しています

が、今は何も良い方法がありません。”

 荆轲は言った。“私があなたの首を持って秦王を暗殺しに行けば、燕の憂い

を無くし、あなたの恨みをはらすことができます。” 樊於期は(偏袒扼腕)片袖

を脱いで腕を出し、左手で右腕をしっかりと掴んで言った。 “私は日夜悔しい

思いをしていましたが、今日ついにあなたの教えを聞くことができました。”言い

終わると、その場で自ら首を刎ねた。 太子の丹は、この知らせを聞き、急いで

馬車に乗ってやって来て亡骸に伏して慟哭した。

 以来、“扼腕”は怒り、悲しみ、あるいは発奮することに用いている。