「典故300則」その492012年10月10日 08:11


 今日のテーマは、自己の利益を求めず世のため人のために働く官吏のお話。

賄賂で成り立つ今の中国には希有の存在、勿論今の日本にも見あたらない。

 典故300則その49:蹈海dao hai

 戦国時代、秦王は諸国の君主を統治しようと考えていた。ある時、趙の国の

首都が秦軍に包囲され、趙王は恐れ戦き,秦王を皇帝とすることに同意したい

と思った。

 この時、丁度斉の名士である鲁仲连が趙の国にやって来て言った。 “秦は

とても好戦的で、庶民に対しても捕虜に対するのと同じように厳しく、私ならば

決して秦の民などにはならず、むしろ海に飛び込んで死にますよ。”  そして

秦王を皇帝として仰ぐことの弊害を詳しく説いた。

 その後、魏の国が派兵し趙の国を救援に来たため、秦はしかたなく撤退した。

趙王は鲁仲连に礼をしたいと思ったが、鲁仲连が言った。“私は趙の民の為に

やった事です。報酬を求めるようなことは商売人のすることであり、私はそんな

ことは出来ません。”

 後の人は“蹈海”を、死んでも屈しない気概を喩えるようになった。