日本人はなぜ戦争へと向かったか2011年01月09日 23:55

 今夜のNHKスペシャル“日本人はなぜ戦争へと向かったか・第1回:

外交敗戦”孤立への道”は、とても興味深かった。 第一次世界大戦時

(1914~1918)の好況から、一転して大不況となっていた日本経済は、

1923年に関東大震災に見舞われ、震災処理のための震災手形が膨

大な不良債権と化し、完全に行き詰まっていた。

 この昭和金融恐慌(1927~)の最中、1929年10月24日にニューヨーク

証券取引所で株価が大暴落したことを端緒として、世界的な規模で金

融恐慌が広まり、日本経済はさらなる苦境へと追い込まれて行く。

 この苦境を打開するため、反共(反ロシア)を旗印として、各国との外

交を模索して行くのだが、陸軍と海軍、そして内閣とが互いに連携する

ことなく、むしろ敵対しながら国家としての総意の無いまま外交を展開

した為、諸外国からの信用を失って孤立し、ついには陸軍の暴走から

太平洋戦争へと突入して行く。

 図らずも、この年末年始に読んだ浅田次郎氏著の“マンチュリアン・

リポート“が、丁度この時期満州に於いて暴走する帝国陸軍の所業を

つまびらかにしている。

 第1回の今夜は、窮地からの脱却を図るべく3頭(陸・海・内閣)の

龍が、それぞれの閥益を優先し外交を展開する様子を当時の関係

者や残された文献をもとに検証している。まさに“政党あって国益無

し、省庁あって国家無し”、国家的展望のない外交を展開する日本の

現状と完全に重なっている。日本国民怒るべし!

 第2回:巨大組織「陸軍」暴走のメカニズム放送は、1月16日(日)

9時30分から。傍若無人に振る舞う中国に怒る諸兄諸氏必見!

マンチュリアン・リポート2011年01月10日 15:04

 作夜の”NHKスペシャル”を見ながら、先日読んだ“マンチュリアン・

リポート“を反芻していた。昭和天皇から密命を帯びた主人公の不敬

軍人志津中尉が張作霖爆殺事件の真相を究明するというストーリー

に、清朝を滅亡に追い込んだ中国史上最悪と言われた西太后の思想

を添え、そして彼女の為にとてつもない巨費を投じて創られたという

史上最も豪華な英国製機関車“龍鳳号:ドラゴン・フェニックス”を擬人

化して登場させ、物語は展開して行く。

 この本に対する評価は、これまでの浅田作品に魅了されていた読者

からは決して高いものでは無いが、著者は西太后が想い描き、頑なに

守ろうとした悠久の国、清朝のあり方を次のように顕している。

“中華という呼び名は、世界の中心という意味ではない。この地球の真

ん中に咲く大きな華、それが中華の国。人殺しの機械を作る西洋の文

明など信じずに、たゆみなく、ゆっくりと、詩文を作り花を賞で、お茶を

淹れ美味しい料理をこしらえ、歌い、舞い踊ることが文化だと信じて疑

わぬ、それが中華の国。”

 また、国民から圧倒的支持を得ていた北支指導者の張作霖を爆殺

した日本軍の行為について、筆者は主人公の言葉を借りて次の様に

語っている。

“軍人は忠義(軍に対して)であるよりも、正義でなければならぬ。大和

魂も武士道も、これでしまいだ。日本人がこの先どんなきれい事を言お

うが、誰も信じない。日本人は祖先から受け継いだ血の最も大切なも

のを、張作霖爆殺事件で投げ捨ててしまったのだ。”

 隣国中国と仲良く付き合うには、決してこの歴史から目を背ける事は

できない。彼らはまだ満州侵略の歴史を忘れてはいない。